所詮は自己満足なエコ

F20 m135i 前期型 のインテリアデザインは, かなりイケてない.

シルバーの装飾がドアノブ・ダッシュボード上・iDriveダイヤル周辺等の広範囲に渡って配置されており, スポーティ感を演出したかったのか分からないが, 完全に裏目に出ていて同乗者からはすこぶる評判が良くない. M Performanceブランドとしてアルカンターラ素材を奢ったオプションパーツも販売されており, 換装することでインテリアがブラックで統一されて, きっと落ち着いた雰囲気になることだろう. ところがパーツ代だけで15万円程度するため, 同乗者からのマイナス評価だけで支出できるものじゃあないのだ.

ということで, 以前 S氏から教えてもらったAliExpressで, F20前期用のインテリアカーボンパーツを物色してみたところ, 品質不明の安価なパーツを発見. ぶっちゃけ怪しさ満点ではあるのだが「万が一, フィッティング含めて品質に問題があったとしても, この価格だったら勉強代として割り切ってもいいかな」と思わせてしまうところが, 中国恐るべしである.

初めはリスクも踏まえて商品を一つ購入してみたところ, 中国本土での発送処理も早いし, 届いた商品の品質も想像していたより高かったため, こうなると購入欲がもう止まらない. ドアノブやら何やら, 元々シルバーだったところはカーボンデザインで埋め尽くしたくなってしまう訳で.

フィティングに少々課題のあるパーツもあったが, とにかくコスパが素晴らしいので満足度は高い. 今度はR1250GSのパーツでも物色してみようかとも思うが, いかんせんR1250GSは弄りたいと思う箇所がほぼ無いため, 興味本位でやると改悪になってしまいそう. 電装系パーツはCANバスシステムに影響出てしまうかもしれないし.

さて, YAMAHAから借用して1ヶ月弱が経過したE01は, ODOが300km程度となった. 先日は久しぶりにアクシスZにも乗って, 同じ原付二種モデルとしての違いを改めて体感した. まず2車種の乗り味や取り回しの違いについてだが, とにかくE01の作り込みが素晴らしく, これは歴史のある大手バイクメーカーだから可能なレベルであり, (あくまで想像だが)EVスタートアップ企業の製品はどこか荒削りな部分が見えてしまうものではないだろうか. 操作性も良く考えられているなという印象で, 乗り味についてもアクシスZとは比べ物にならないくらい乗り心地が良い. まるで電子制御サスが付いているR1250GSのような乗り心地で, 荒い路面もうまくいなすところは, 原付二種とは思えない仕上がり. 以前乗っていたマロッシ製サスが装着されていたNexus500よりも, 明らかに上品な乗り味を実現している. これはサスセッティングということもあるだろうが, EVならではの静かさや低重心も効いているからだろう. E01が快適なジョギングを支えるスニーカーだとしたら, アクシスZは下駄のようである. それくらいシャシー・サスペンション・エンジン/モーターの違いがあるということなのだが, 下駄は下駄なりの手軽さもあるのだ.

EVという乗り物を実体験することで, 現時点ではEVが提供する価値は「自己満足なエコ」なのだろうな, と考えさせられた. やはり車業界・バイク業界全体でバッテリーの規格化とリサイクルシステムを構築しないと, ユーザーから見ればバッテリーの寿命が車両の寿命になってしまうのは間違いない. 例えば, ヤマハがE01を安価に販売を開始することができたと仮定し, 補助金込みで60万円だったとしよう. ユーザーが購入から7年が経過し, どうにもバッテリーの減りが早く普段使いにも影響が出てきたため, YSPでバッテリー交換を相談したところ, 工賃込みで35万円の見積りが提示されたら, アホらしくて車両手放したくもなるはずだ. こんなの, メーカーが独自でシャシーとバッテリーを込みで設計し, 独自にバッテリーを実装していったら, 長い目で見てユーザーには不幸が待っているだろうし, 全く持ってエコとは言えない.

カーボンニュートラルに向けてのEVだというならば, バッテリーは規格化した上で交換式しか認めず, そのリサイクル化においては国・業界をあげてエコシステムの構築に邁進すべき. EV導入の補助金は, 車両ではなくバッテリーを対象とした考え方にしたら良いではないか. テスラのEVがいかに静かで速くハンドリングも良いと言っても, シャシーと一体化された交換不可なバッテリーを搭載するならば, 少なくともエコという看板を与えてはダメじゃあないのか.

E01も30kgのバッテリーモジュールを搭載する固定式. 一方でENEOSとホンダ・カワサキ・ヤマハ・スズキが, バッテリー仕様の共通化とバッテリーモジュールのシェアリングサービスの展開を図ろうとしており, 今年の4月に新会社を設立している. 運輸省・環境省・経産省・エネ庁が連携して普及を後押し, 真のエコシステムを構築して欲しい. 各メーカーは交換式バッテリーモジュールを使った車種の開発を進め, バッテリー交換作業を意識した新たなシャシー設計・保守性設計の高度化に期待したい.

理解が深まってきた

E01をしばらく乗ってみて, それなりに理解が進んだところがある.

まず片道約17kmの通勤で利用した電費について. ECOモードを基本として, ここぞという時だけSTDモードに切り替える乗り方をした場合は, 往復(約34km)の距離でフル充電状態から1メーター消費した程度だった. 新車ということでバッテリ性能も最良とはいえ, これは優秀ではないだろうか. これならば充電をサボっても, さほど困ることはないはず. 一方, 往路はSTD中心に・復路はPWRモード中心の乗り方をしてみると, 3メーター消費したことから, ECOとPWRの電費差はそれなりに大きいことが分かる.

さて, ここからが「何故EVを買うのか」というテーマにつながっていくのだが, 運転していてラクチンであり・安全であり・楽しいのは圧倒的にPWRモードだ. 前回の投稿でECOモードは非力であると書いたのは, 車両引取り後に幹線道路のみを走ったことにより, 加速感・速度感を正しく認識できていなかったことが要因. 住宅街を走ってみて, ECOモードでもガソリンエンジンのAxis Zと比較しても遅いということは無かったので, ここで訂正したい. ただしECOモードではメーター読み65km/h程度で速度頭打ちとなるため, 幹線道路で加速したい時は車体が前に出ないため結構焦ることになる.

ところがPWRモードではアクセル開度と速度感が一致しており, 一気に加速して合流したい時等, 安全運転にもつながる. E01の完成度が素晴らしいのは制御プログラムの出来が良く, PWRモードであってもアクセル開閉でギクシャクすることは一切無いし, 急なアクセル開でもジェントルな動きを見せる. EV車のパワーモードとなると, ガソリンFI車が普及し始めた頃の所謂ドンツキ挙動をイメージしてしまうが, その乗り味は本当に次世代モビリティということを意識する. 何度も言うが, EVの持ち味というのもあるだろうが, ヤマハが開発したこの車両の完成度の高さというもの非常に感じる. 少しネガな点を言うと, 車両が重い分, ブレーキはもう少し奥でグッと効くタッチと絶対的な制動力アップをお願いしたい. もう1点はE01というより電動バイク共通のネガな点として, 車の死角に入って走行するのはかなり危険だということ. 最近の車はセンサーで周囲の走行車両をモニターしてドライバーに伝える機能を備えていたりもするが, 通常は死角にバイクが走行していないかはドライバー自身が目視含めてチェックすることが基本. 案の定, 幹線道路を運転していた時に無音の電動バイクに気付かず, 突然車線変更してきて私のE01を薙ぎ倒そうとしたドライバーがいた.

「何故EVを買うのか」を, コストやエコ度で考えると結構難しい. このE01をどのような価格設定でリリースするのかは不明だが, 125ccスクーターの圧倒的コスパに対抗するには燃費(電費)だけでは勝負にならないのは明白. エンジン車はきちんとメンテナンスすれば何万kmでも何年でも乗り続けることができるだろうが, EV車は特にE01のような固定バッテリーだとその寿命により大きなコスト負担が発生してしまう, しかもバッテリー廃棄を考えると本当にエコなのかという疑問もある. ユーザーにとってみるとバッテリー交換時のコスト負荷を機に車両を手放してしまう可能性もあり(車だと初代日産リーフやBMW ActiveHybridのリセールがとんでもないことに), 車両ライフでみてエコ度が怪しい. そのようなリスクが想定される中, 高価格で電動バイクを発売して, 誰が買うのかと.

その辺りの最終的な見極めが今回の実証目的なのだろうか. E01のメーターにはGPSマークがあり, どうやら位置情報をロギングしているようだから, 実証が終わった後に100台分のログ情報を分析して, ユーザーがどのような使い方をしているのか, 目的地・乗り方・充電頻度等を把握して, 最終的には商品価値・値付けに反映させるのかな.

まだ短い期間であるが, E01に乗ってみて私個人の意見として電動バイクに求めること. それは, 単純なコスパではなく圧倒的なモーターならではの乗り味と性能, つまりスペシャル感・プレミアム感だ. コスパや使い勝手(充電の手間等)で考えるとガソリン車に絶対勝てる訳がなく, やはりやや高い価格であってもガソリン車では得られないパフォーマンスを得たい, という動機しかないかな. パフォーマンスとは静粛性・加速性能・低重心による操安性の3点.

E01に乗った直後は振動も排気音も無いことに対して, なんと無味乾燥な乗り物なんだと感じ, とてもじゃないが移動手段としては良いが, 趣味バイクとしてワインディング走行等あり得ないと思ったが, 乗っていくうちに変化が出てきた. 確かに排気音が無いため高揚感は味わいにくいのだが, 車重があるのにハンドリングは犠牲になっていないところもある. これはこれで, 技術開発が進めば趣味バイクとしても成り立ち得るのかもしれない, と. いやむしろその要素でプレミアム感を出していかないと, 台数が出にくいバイク市場ではまだまだ厳しいような気がする. もしくは, 台数が出るスクーター市場でのコスト適正化に向けて, 当面はメーカーもあえて低い価格設定した上で国・東京都の補助金により普及を図るかだ. 東京都の補助金がかなり大きいため, E01の小売価格が低く設定されるならば, 十分に検討に値すると言える.

E01の製品としての完成度は十分, あとは一体いくらで販売するのか.

YAMAHA E01

ヤマハがアナウンスしていた電動スクーターの実証実験に応募し, 運良く当選したことから, YSP店舗まで車両を受け取りに行ってきた. 今回は100名のモニター枠だったのだが, ヤマハから当選のメールが送られてきた時は正直, 応募総数はそれ程多くはなく低い倍率での抽選だったのでは無いかと思っていた. というのも3ヶ月の車両貸出し期間に対して月額2万円のリース料がかかるため, 応募はかなり興味がある人に限られることが想定された. 全国での応募総数は不明なものの, YSP店鋪の話では顧客の多くから抽選から漏れたとの声があったとのことであり, 当選はそれなりにラッキーだったのかもしれない.

私の応募動機は, 二種原付カテゴリーであるE01が, コスパ最強のAxis Zと比較して, どの程度優れたドライバビリティを持っているか, そしてガソリン給油に対して圧倒的に手間がかかる日々の充電行為が, どの程度許容できるレベルものか実体験したいためである.

ヤマハ E01の主なスペックは以下の通り.

  • 全長 1,930mm / 全幅 740mm / 全高 1,230mm
  • バッテリー込みの車重 158kg
  • 最高出力 11PS, 最大トルク 3.1kgf-m
  • ポータブル充電装置による満充電時間 14時間

これに対して普段乗り慣れているヤマハ Axis Zのスペックと比較すると一回り大きく重く, NMAX125とほぼ同等. 出力はNMAXと同等であるがトルクが大きいため, ゼロ発進や坂道で差が出そうである.

  • 全長 1,790mm / 全幅 685mm / 全高 1,145mm
  • 車重 100kg
  • 最高出力 8.3PS, 最大トルク 1.0kgf-m

電動バイクには一度も乗ったことのない私が予備知識なしで走り出しても, 全く違和感なくドライブできてしまうのは, この車両の完成度が高いことにも起因しているだろう. 実証実験と言えども車両はプロトタイプというようなレベルではなく, 市販車の品質そのものだ. ヤマハが市販またはリース展開することは間違いないだろうが, この実証実験で得ようとしているものが何なのか非常に興味がある.

車重がAxis Zの1.5倍もあるため, いかにバッテリによる低重心と言えどもその重さはしっかりと感じる. なにせ, Axis Zは駐輪時に車体を持ち上げて停車位置を微調整することが可能なのだ. 一方, E01でその行為をやろうとも思わないし, やれる訳もなく, スイッチ切り替えによりモーターでバックができる機能が付いていることで優越感に浸るしかないだろう. 重いE01も一度走り出してしまえば非常に楽チンで, 発進時のフラつきは皆無, ハンドリングはヤマハらしくニュートラルで扱い易い. いや, 正直この扱い易さと完成度には驚かされた.

少々困惑したのはEVのため無音で走行するため, 盛り上がり感がなく, 走行速度を肌で感じ辛いことだ. 慣れだとは思うが, 気が付くと幹線道路の法定速度を超えていたこともしばしば. エンジンだと音と振動でスピード感を掴んでいるのだなぁと, EVに乗って改めて認識できた. 長所でもあるはずの音と振動の無さについては, 想定通り無機質感があるためスクーターのような移動手段としては受け入れられるものの, 趣味のバイクとして捉えた時に果して旅の友となり得るのだろうかと疑問を感じる. 走行距離の問題から当面は旅の友には絶対にならないとしても, 例えば近場のワインディングを駆け抜けたり, ちょっと近場を一回りしてリフレッシュしたいという目的においては, エンジンの咆哮や振動によって得られる非日常感でなければ達成できないような気もする. これからはカワサキがEVをリリースしてきそうな気配なので, EVでもエンジン並みに楽しいぜ!と言わせてくれるかもしれない. そういう意味ではEVは, 今後の可能性・未来を感じさせてくれるものであることは間違いない.

かなり話が逸れてしまった. 純粋な移動手段としてE01の使い勝手をこのブログではお伝えしていけるようにしたい. 走行モードは3段階でトラクションコントロールも付いているため, 雨天時も安心して走行することができるだろう. どのモードで走行しても唐突にパワーが出るようなこともなく, 信号からの発進ではフルスロットルで問題なし. パワーが抑えられているECOモードは加速が物足りないと感じたため, すり抜けで交差点の先頭に出た後の発進時に, 車に迷惑がかからないか少々不安. おそらくこの手のスクーターは通勤・通学の用途が多いと想定され, 充電は日々実施することを考えるとECOモードで走行距離を稼がなくとも良いのではないだろうか. スタンダードモード以上で走行していれば, その加速感にも不満はない. ただし, EVだからと言って強烈な加速感が味わえるだろうと期待してると肩透かしをくらうはずだ.

モーターはヤマハ独自開発というのだから恐れ入る. 長年に渡りEVに取り組んできたヤマハならではということか. E01ではモーターの駆動力をベルトドライブで後輪に伝える機構となっている. しかしアーム部等の造形を見ても実証向けというレベルではないね.

スイッチ類の操作性についても良く考えられており, 不満に感じることはない. 車両前方の充電部カバーやシートはスイッチ一つで開けることができるし, その他スイッチもシンプルで奇を衒ったところは一切ない. シート下の収納はAxis Zよりも深く, ジェットヘルなら入りそうなくらいの容量があるため, 普段の買い物使いでも問題なさそう. 唯一の不満としては, Axis Zと比較してしまうと足元が分割されており, いわゆる女性座りができないこと. Axis Zは足元の空間が平面になっていることで, 小荷物を足の間に挟んで載せることができるのが重宝している(本当はダメな運転方法なのだが).

充電関係ではもっと使い込んでからインプレしたいと思うが, 車両に標準で付いてくる100Vのポータブル充電器はもう少し改善して欲しいと感じた. 満充電までに14時間かかるのは仕方ないとして, 充電器が大きく, しかもケーブルが短い!充電器のスタートボタンを押すと充電が開始されるのだが, 妙な稼動音がして少々うるさい. 100Vであればもっとライトな充電方法が取れないものだろうか.

そして, 残念極まりなかったのが200Vの普通充電器である. 私はいつか電動スクーターを購入することを想定して屋外に200Vコンセントを設けていたのだが, E01用の200V普通充電器を使う場合は, 壁面に充電器を固定化する工事を打たねばならないとのことなのだ. 詳しい理由は聞いていないので分からないが, 何故充電器を床に転がしておく利用形態ではダメなのだろうか. たかが3ヶ月のモニター利用で, 家の外壁に穴をあけて充電器を固定化するモチベーションがわく人がいるだろうか. この普通充電器は満充電までが5時間なのだから非常に魅力的なだけに残念だ. また, 満充電まで1時間という夢のような急速充電器もラインナップされているものの, 導入・設置にはとてつもない金額がかかること, しかもその負担は利用者とのことで, これを注文するのはE01が正式発売した時には購入する前提かつカーボンニュートラルに高い意識を持っている方のみと言える. ホンダが進めている交換式バッテリーが何だかんで最も使い勝手が良いのかな…